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世話のいらない花菖蒲栽培法を考える

 伊勢花菖蒲園  前田義武


 私が花菖蒲栽培に携わるようになってから、約二十五年になります。その間を振り返ってみると、その栽培方法に様々な移り変わりがありました。

1 花菖蒲の枯れ葉処理
 以前は鎌で刈り取り処理していたものを、今は灯油バーナーで直接燃やす方法を取っています。雑草も同時に駆除することができ、特に雑草の多い圃場は、処理の半月ほど前に除草剤のプリグロックスLを散布しておくと、完全に雑草はなくなります。また、圃場への除草剤散布は、花菖蒲が完全に休眠している時点で行います。ラベルは地上より上部に上げておく、私はパイプを利用した金具で重宝しています。



2 掘り取りと植え替え
 従来はスコップで掘り取っていましたが、現在では小型乗用トラクターの後部に手作りのアタッチメントを取り付け、それによって行っています。もう少し詳しく申しますと、本機の後部に幅三十センチ位、長さ一メートルのステン板を取り付けたU字樋を取り付け、その先に焼き入り刃を付け、後ろには逆転ロータリーが回ります。トラクターが前進しますと、花菖蒲の株がU字樋を上がって来ます。そして逆転耕運爪の上に誘導された株は、しばらく下からたたき上げられます。爪の中央部に来る頃までに土は七十パーセントほど落とされ、後部に比較的細かく離された株が送られます。通常十アール当り二年生の株が五百株程度植え付けられていますが、この掘り取り機によってオペレーターの他に女性一人いれば、一日で済ませることが出来ます。
 植え付けの作業は水稲同様の田植えを行います。これは昔ながらの網手植えになります。こうして植え付けた圃場は、稲作と同じ除草剤を使用しています。近年はポット仕立ての株を植え込みに使用することが多くなってきましたが、植え付け後の管理は田植えした時と同じです。


3 花菖蒲のポット栽培
 花菖蒲のポット栽培には、長尺コイル(ブリキ)を使用して腰水栽培をしています。これはまず鋼材店より幅九十センチの長尺カラーコイルを必要な長さ購入し、設置する現場で左図のように加工します。私は食虫植物なども栽培しておりますが、サラセニアなどはこの腰水栽培で至って世話いらずに栽培することができます。私は、花菖蒲もこの方法で栽培しています。ぜひお試しください。
また私は、花菖蒲圃場の一角に、露地花菖蒲水耕栽培もおこなっています。これは、道路排水などに使われるベンチフリュム(幅三十センチ、長さ二メートル、深さ二十センチ)を使い、トレーに入れた花菖蒲のポットをベンチフリュムのツバに乗せておきます。ポットが二〜三センチ溶液に浸かる仕組みにしています。一種の水耕栽培です。ベンチフリュム二列が一式として、一列めのポットが溶液に浸かっているとき、二列めは溶液面が下がります。この動作をポンプやタイマー等で一定時間ごとに繰り返す方法です。今は三時間ごとに繰り返すように設定しています。この方法は連作障害はないのですが、露地に施設があるため、天候によって管理が左右されやすく、コスト高なので、今後の改良が必要です。 


 このように私の花菖蒲栽培も、時代と自分のおかれた環境により変化してきましたが、まれに昔のやりかたの方が良いこともあり、大いに勉強したいものだと思います。