トップページ > 目次 > 会報> 27号目次

私の花菖蒲品種収集と写真

岡山県 片岡 文男


 私がはじめて花菖蒲を手にしたのは二十歳のとき、園芸雑誌に載っていた花菖蒲セットの写真を見て、花色の豊富さに感動し購入したのがきっかけでした。それが二十二年経った平成十年の九月現在、約百五十坪の土地に千六百品種を保有・販売する、小さな花菖蒲園の始まりでした。


 二十二年を振り返ってみて、一番苦労したと感じることは、それは現在もなのですが、正確な品種を集めることでした。園芸雑誌に写真が載っている品種を手に入れたくても、その当時私の住んでいる岡山県には、花菖蒲園はほとんどなく、園芸店に名称付きの苗がわずかに売られているだけで、どこで数多くの品種が販売されているのかわからず、最初の六年くらいは園芸雑誌の通信販売で購入していました。その後ある雑誌のなかで加茂花菖蒲園にて花菖蒲の通信販売リストを発行していることを知り、以来毎年少しづつですが品種を収集してきました。それが近年は、加茂花菖蒲園だけでなく、他の花菖蒲販売業者や花菖蒲の育種家など、また、各地の花菖蒲園に見学がてらおじゃまして、自分の持っていない品種を販売していたら購入するようにして集めております。
 それでも正確な品種を集めるというのは難しいことで、品種を正確に保存している花菖蒲園や栽培家、また育種家からのものはともかく、その品種だと思っていても咲いたら全く違った品種であることもままあり、さらに困るのは、その花が本当にその品種であるかどうか、判断に苦しむものもあることです。基本的には相手の品種ラベルを信用して購入するのですが、正確な品種を手に入れるというのは本当に難しいことです。
 また、当園では花菖蒲を全てポリポットで栽培し、品種ラベルが紛失しないよう、ポリ鉢にラベルをホチキスで止めるようにしていますが、各品種とも一品種当りの鉢数は多くないので、植え替えなどのとき、ともすれば品種が混乱する可能性もあり、長年正確な品種を数多く保存することも、やはり苦労の多い仕事です。


 そんなことで集めた品種の数は、今では先にお話しました通り千六百品種を超えています。時折「どうしてこんなに品種を集めたいのですか?まだ集めるつもりですか?」と尋ねられることもありますが、たとえ私にとって平凡な花でも、十人十色で見る人によってさまざまな好みがあり、それを全てかなえることは不可能ですが、一品種でも多く来園してしてくれる人達に見てもらいたいという目的のため。これがまず一つと、もう一つは、花菖蒲は数多くの品種があるのに、自分の希望とする品種を購入できる園がきわめて少ないのですが、それを当園では、小さな規模ですが、実際に花を見て、数多くの品種のなかから自分の好みの品種を選んで買うことのできる園というスタイルをめざして、手に入れることの出来る品種がある限り、収集したいと私は考えています。


デジカメとプリンターで品種確認
 さて、当園は保有品種が多く、開花期には来園者への栽培管理説明や苗販売に忙しく、品種確認が思うように出来ないため、昨年までは開花期にフィルム撮影をしていましたが、出来上がった写真を見ると、ピントがボケていたり、花の姿が思ったように写っていなかったりと、納得できる写真がなかなか撮れませんでした。
 そこで今年からデジタルカメラ(エプソンPC500)での撮影に替えてみました。デジタルカメラにして良かったことは、液晶画面で花を見ながら写せるので失敗が少なく、一コマづつ修正もでき、一枚のメモリカードで何回も撮影できるので、フィルム交換の手間も必要ないことです。プリンター(エプソンPM750C)があれば、葉書サイズからA4サイズまで、自分で簡単に短時間で印刷できます。印刷用紙にはカラーインクジェットの葉書サイズの光沢用紙を使い、今年は幸い開花期に雨も少なく、保有品種の約半数を撮影することが出来ました。写真の保存には、一八0枚収容可能な葉書ファイルに当園保存品種の整理番号を張り、花のない時期に来園された方の花選びや品種確認に活用しています。


協会への要望
 私からの協会へのお願いですが、私だけが感じていることかも知れませんが、花菖蒲は他の園芸植物より栽培の歴史も古く、愛好者も多いのに、現在一般的な書店で手に入る花菖蒲に関する参考書的な内容の本は、冨野耕治氏の著書『カラーブックス園芸ガイド三 花菖蒲』と、『趣味の園芸作業十二ヶ月シリーズ 花菖蒲』の二冊だけで、いずれももう20年以上も昔の昭和五十年代に出版された本しかありません。その後何年も経ち数え切れないほどの新花も作出されて来ています。日本花菖蒲協会の会員の方々には、『一九九五年度版花菖蒲品種総目録』や同九八年版が送られていますが、これは花容の説明が文字だけですので、読む側の感性によって受け取り方がかなり異なってきてしまいます。 事情は多々あるかとは思いますが、花菖蒲の栽培に興味を持った人たちが参考になり、各地の花菖蒲園で品種確認の基準になるような品種写真が多く載っているような本を、出版してもらえないでしょうか。