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 多品種栽培と管理について

  
              
千葉県木更津市  橋本卓雄
(写真@)栽培圃場 全幅3×6m 白い部分の2か所は通路両サイドは仮鉢苗、中央手前は盆養鉢苗
(図@)作業台帳
(写真A)品種要覧
(写真B)「碧鳳」デジカメで撮影した元の画像
(写真C)パソコンの画像処理ソフトを使用し、色を補正した後

1 はじめに
 栽培の仕方には露地植えと鉢植えとがありますが、今回は私が実際に行っている鉢
植えで話を進めさせて頂きます。
 多品種、即ち多くの品種を育てるとは言っても何種類をもって言うのか定義はありませんが二百以上も一人で栽培するとさすがにキツイものです。
 本鉢で一品種一鉢と言うわけにはいきませんので一品種平均五鉢としても千鉢以上になりますし、本鉢前の仮鉢ともなると倍の二千鉢以上にもなる場合があります。
 ましてや、一人で三百、五百、一千品種以上も育てるなんて考えるだけでも恐ろしくなります。
 このような背景を前提に栽培するにあたって何が大事かと言えば、花菖蒲の生育に支障を来たすことなく如何にして「手間を省くか」を常に模索することだと思います。
 時には諸先輩方の創意工夫をお聞きして利用させて頂くことも大事なことです。

2 栽培と管理
 一般的な鉢植え栽培の仕方は書店の解説本に譲って、ここでは多品種であるが故の栽培と管理について触れてみたいと思います。
(a)鉢の寸法
 鉢は仮鉢も本鉢もビニール鉢を使用しています。
 鉢の寸法は大きければ大きいほど肥培効果が出るのは承知していますが広い庭や畑を持たない我が家では生育に支障を来さないギリギリの寸法を求める必要があります。
 現在、用いているのは仮鉢が二・五号、本鉢が四号です。

(b)土のリサイクル
 株分けの際に出た土は天日干しをした後に目の細かいフルイに掛けて微塵砂だけを捨てます。
 残った土を再度利用する時はこの土を4に対して草花の培養土を5、さらに乾燥牛糞を1の割合で混合し、本鉢用の土として使用しています。
 培養土はなるべく木屑の入ってない黒土系のものが良いようです。
本来ならばこのようにして作った混合土は一年間程寝かせておいてから使ったほうが
良いのは分かっていますが蓄積場所のない我が家では直ぐに使っています。
◆腐葉土について一言
花菖蒲を作り始めてから暫くは腐葉土を混入していましたが、腐葉土の量が多いほど根に赤錆病が出やすく感じていました。
生育に支障を来たすほどの問題ではないにせよ、やはり根は「真っ白」であって欲しいので実験的に腐葉土の使用を止めてからは以前ほど赤錆の出る率は減少しました。 私は植物学者でもないのでこれが直接の原因であるとは断定できませんが自分だけで納得し、実行しています。

(c)我が家の作場
 鉄骨組の頑丈なガレージの上に鉄筋防水コンクリートを流し、高さ2pの堰堤で囲った浅いプールを両サイドと真ん中の3ヶ所に作り、それぞれに水抜き穴を設けて4〜6月の間だけ栓をして腰水で生育させています(写真@)。

(d)鉢数管理はパソコンで
 株分け後の植え込みは2・5号の仮鉢を使いますが、一品種あたりの鉢数は余り意識せずに良い苗だけを選ぶことに専念します。
 植え込み完了の仮鉢数は逐次パソコンで作った「作業台帳」(図@)に入力していきます。
 株分け作業も全て終了し、暫くの間仮鉢で養生します。
 養生期間中に見つけ出された生育不良苗の仮鉢は随時処分すると同時に「作業台
帳」の数も修正しておきます。
 仮鉢から本鉢への植え替え時期を迎えると、先ず「数遊び」をします。台帳にある「本鉢数」は植え替え前なので全て空欄になっています。最初に入力する数字は貴重品種、お気に入りの品種を多めに確保し、他は平均的に数字を埋め込んでみます。次に、我が家の作場に置くことができる本鉢(4号ビニ鉢)の総数は一定なので、この数字を動かさずに各品種の本鉢数を動かして調整します。
 この表が出来上がると本鉢への植え替えを開始します。

(e)多品種管理は名札管理よりも番号管理のほうが楽
 白の油性ペンを使ってビニ鉢側面に管理番号を書きます。迅速的、経済的、安全性(名札は吹き飛んだり、折れたりする)

(f)鉢底穴について
 蛇足になりますが、私にとっては最近まで悩みのテーマでした。
 通常の底網ネットを使った場合
@土が流出し、置き場が汚れる
A鉢内で充分根が育つ前に網目から根が飛び出す
B株分けの際、根が網目にからみついているので作業が捗らない
今は台所用品として販売されているクッキングペーパーを鉢穴サイズに裁断して用いていますが、これが大変具合良いです。
 鉢の水はけもほどよく、前記@〜Bもそれなりに改善されました。
 又、株分けせずにそのまま露地植えしてもクッキングペーパーなので異物が土中に残ることもありません。

3 記 録
 多くの品種を栽培すればするほど記録の必要性が求められます。
 前記の作業台帳に写真の項目がありましたが、これはその品種が開花した時にデジカメでどのような状態まで撮影したかを確認する為です。
 ○ならば撮影済み
 ×ならば再度撮影の必要あり
 ブランクは未撮影
 又、この写真は品種要覧(写真A)の作成の素材としても活用しています。

 ブルー系の花菖蒲を写真に撮ると紫外線の関係で赤紫色になってしまいます。これをパソコンで補正するには全体補正では無く部分補正(色の置き換え)で私は修正しています。写真Bが「碧鳳」元画像、写真Cが補正後の画像です。

(HP担当注)上記の写真BとCですが、モニタ上の色の設定によって、見え方が異なります。また、室内の照明によってもモニタ上の色が異なって見えます。デジカメなどで色を追求するのであれば、「キャリブレーション(色合わせ)」が重要です。モニタのキャリブレーションを行う専用ソフトもあります。興味のある方は、googleなどで検索してみてください。また、印刷の色を追求する場合もモニタと同様プリンターもキャリブレーションが必要になります。(佐々木)