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 近況報告と2006年花菖蒲品種登録

                       滋賀県大津市 冨増和彦


 
 昨夏は6月上旬の空梅雨や、コガネムシ幼虫が大発生し、鉢内の根の食害が甚大であったなど、花菖蒲栽培には苦労した年でした。コガネムシ幼虫は今でも植替え未了の鉢には潜んでいる可能性が大です。寒芽分けを行い、できるだけ退治したいと思っています。
 今年は次の8種を登録させていただきます。余剰苗についてはお問い合わせください。
  
粟津晴嵐(あわづせいらん)  写真右

葦の浮船×浅葱水晶

三英中大輪、中早生。花弁は水色地に紫吹っかけまだらと脈が入る。ひだがあり、幅広でやや垂れる。鉾は紫まだらに縁白。翼は先が青紫でやや発達。
粟津浜(あわづはま)  写真左

葦の浮船×浅葱水晶

三英中大輪、中早生。花弁はほとんど白に近い水色地に紫の脈が入る。ひだがあり、幅広でやや垂れる。鉾は紫まだらに縁白。翼は先が紫でやや発達。
粟津の光(あわづのひかり) 写真右

葦の浮船×浅葱水晶

三英中大輪、中早生。花弁は白地に脈が入る。ひだがあるが「粟津浜」よりは少ない。幅広で少し垂れる。鉾は紫まだらに縁白。翼は先が紫でやや発達。

 上記三品種は地色の色調がやや青紫がかるか白っぽいかくらいの違いしかない。この交配では、花形、翼の色に若干の差異のある程度で、ほとんど同じパターンの大振りの三英花ばかりが出現した。片親の「葦の浮船」はここ数年、弱勢化し消滅の危機にあるが、実生は今のところ元気である。実生同士のF2も試みているが、孫の代には六英も出現している。

近江八景(おうみはっけい) 写真左

紫揚羽(伊勢系)×?

三英中輪、中早生。花弁は浅葱地に白脈、ひだ・縮が入り、角張って動きがある。鉾は細く白地に周囲は赤紫。翼は白地に薄い藤色かすり入り。不整形の花形が三日間、変わり行く様子が面白い。縮独特の泡のような輝きも魅力。

瀬田の光(せたのひかり) 写真右

たばた姫×?

三英中輪、中早生。花弁は藤色地に目元近くに白脈。幅広でひだが少しあり、縮も少し入る。垂れてほぼ重なり隙間はあまりない。鉾は小さく翼より上に出ないので、全体に丸みのある花形となる。背丈は低い方。
枇杷紅(びわべに) 写真左

紅しじみ×?

三英中輪、早生。花弁は白地に赤紫の脈と砂子斑少々でひだが少しあり、角張った咲き方。鉾は赤紫に白い縁どり。花弁は付け根が細く、隙間が大きいので、暴れた感じになるが、独特の風情が感じられる。親の「紅しじみ」は登録後、急速に衰え、株の維持で精一杯という情けない状況であるが、本種は強健である。
紅折鶴(べにおりづる) 写真右

品種名不詳伊勢系藤紫鉾白の実生

三英中小輪、早生。赤紫で目元のみやや白っぽい。鉾は白。花弁に隙間はあるが角張った咲き方は伊勢系のもの。一茎二花で花茎は低いので、浅鉢など鉢植え向き。株はよく増える。
吉野鹿子(よしのかのこ) 写真左

美吉野×?

三英中輪、中生。白地に薄紅かすり、重なりやや垂れる。鉾は幅広で白に周囲が薄紅。たいへん愛らしい印象。
 余剰苗は会員のみなさんへお送りさせていただきます。以前は「無料で結構です」とお話させていただいておりましたが、かえっていろいろ気を遣って下さり、恐縮しております。
 そのため、輸送費に相当する分は請求させていただくことにします。(会報32号より)