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 花菖蒲あれこれ 四
                
                
岡山県総社市 片岡 文男

  
肥後系の純白六英などは、品種判定が非常に難しい
  
 自分の好きなものは、予算と保管場所、そして周囲の理解があれば色々としてみたいと思う方は多く、骨董品や玩具など、さまざまなものが収集の対象として登場し、価格を鑑定するテレビ番組が高視聴率で放送され続けており、第三者が見るとゴミ同然としか思えないものが高価で驚くことが度々あります。
 私自身も中学生の頃は切手、高校生の頃は記念硬貨を収集していたこともあり、いずれも収集意欲は自然に消滅してしまいましたが、高校を卒業して就職した園芸店の庭先に「美吉野」に出会って以来、色々な職業を経験してきましたが、気が付けば三十年以上も花菖蒲を収集し続けています。
 私が意識して収集を始めた理由は、今は近くにも多くの花菖蒲園が造られましたが、当時は品種名の付いている花菖蒲は珍しく、身近になかった。また、花色や花容が豊富で、栽培も比較的簡単と思えたからです。その後は会報の第27号に投稿した「私の花菖蒲品種収集と写真」に書いた経過をたどり、現在に至ります。

 
株分け植えかえ時は、一番、品種混乱が起こりやすい。
ラベルをホチキスで止める

 破損することが無い限り、一度収集すれば半永久的に保存できる骨董品などとは異なり、植物の場合は栽培場所や日々の管理、天候などさまざまな要素で苦労して入手した貴重な品種が枯死する場合もあり、花菖蒲などの古い歴史ある植物は、再入手の困難な品種も多数あります。そこで、正しい品種を一品種でも後世に伝えるために品種収集の経験者として、少しでも参考になればと思い、私の考える理想的な保存方法と注意点を書き出してみました。

1.どんなに信頼のおける人や場所から入手した品種でも、新たに入手した品種は、花を確認して正しい品種だけを保存場所に入れる。

 花菖蒲は鉢植えは毎年、露地植えは三年に一度の株分けで、株を若返らせることが必要不可欠ですが、この株分け作業中が品種間違いになる大きな原因です。販売した園でも開花した花を確認しない限り、百%間違いのない正しい品種ですとは言い切れません。

2.入手した苗が品違いの場合、同じ場所から同じ品種を二回以上注文しない。

 購入先でも、品違いは、翌年の開花期に気づいても正しい品種を探して修正するのは大変困難な作業です。また、一度程度の間違いで、白を注文したのに紫が咲いたなどは、二回目は真正品が来ることが普通ですが、微妙な違いによる品種違い、例えば同じ純白花三英花なのだがどうも違うなどは、その園でその個体が真正品と思っている場合もあり、同じ場所に何度注文しても正しい品種が入手できる可能性は低いです。

3.親株は、一品種を最低三株以上保有する。

 親株が複数あれば、万一、一鉢が枯死しても保有株で補充できる。

4.三株の親は三ヶ所に分けて栽培する
 
 同じ場所で同じ管理をした場合、枯死するのも同時期になりやすく、多少でも環境の異なる場所で栽培すれば、絶種の危険がうすらぐ。

5.どんなに労力があっても、親株は一年に一ヶ所しか株分け、植え替えをしない。

 毎年、一ヶ所を株分けすることにより、万一品違いになっても、他の二ヶ所より正しい品種を補充できる。また、株分けの失敗で生育不良になっても他の二ヶ所でカバーできる。

6.株分けや植え替え作業中は、他の用事をしない
 
 作業を中断して電話や来客の応対をすると、品種間違いをする可能性が高い。特に携帯電話での話しながらの株分けは厳禁。

7.株分けや植え替え作業は、大勢で流れ作業をしない

 大勢で流れ作業をすると、責任が分散され、雑談しながらの作業になり、結果品種間違いが起こりやすく、最悪一ヶ所が間違うとその後の全部が品種間違いになる。少数の班を作り、責任を持たせて確実な作業をさせる。

8.鉢植えは、品種ラベルの裏に整理番号を書く。露地植えは十品種おきに基準点となる杭を立て、見取り図を書いておく。

 品種ラベルに品種名を油性ペンなどで書き、雨で文字が薄くなり読めなくなっても裏面に整理番号を書き込むことで正確な品種名が判明する。鉢植えでビニールポットの場合は、ホチキスで鉢にラベルを止める。
素焼き鉢栽培は、目立たない場所に整理番号を書く。露地植えは、風雨や除草作業中などで品種ラベルを紛失する危険性が強く、五品種おきに基準点となる杭などを立て、品種見取り図を書いておく。

9.保有リストを作成する

 保有品種が増えていくほど、品種名や花容を頭の中に記憶しておくことは難しく、他所で苗を購入する時にリストを持っていれば、すでに保有している品種を重複して入手することを防げるし、さまざまな場面で役立つので、保有リストの作成は重要です。

 その他にも、デジタルカメラなどで、花の写真撮影を行い品種確認や独自の品種カードを作成することも重要です。このあたりは既に会報の第27号と第32号にすでに書いてありますので省略します。

 平成17年9月現在、千八百品種を越える花菖蒲を栽培していますが、地方の小さな園がこれだけ品種を収集できたのは、現在に至る過程で巡り会った全国各地の花菖蒲を愛する花友の協力と適切なアドバイスがあったからで、私一人がどんなに頑張っても、これだけの品種を収集することは不可能だったと思います。今までお世話になった花友に感謝するとともに、今後も入手出来る品種がある限り、収集を続けていきたいと考えています。