リゾクトニア性立ち枯れ病の防除
加茂花菖蒲園 永田 敏弘
数年前までは、花菖蒲にリゾクトニア性の立ち枯れ病が現れることは殆どなかったのですが、現在では花菖蒲で最も被害の大きい病害になってしまいました。防除方法はあるにはあるのですが、決定的な方法はないようです。赤字で書かれた部分は感想です。考え方にはいろいろありますので、あくまでも参考にして下さい。
T 発病時期
春先の2月から開花最盛期頃。 秋10月下旬から11月頃
春先の被害が大きく、秋の発生はわずかです。
U 症状
1 発芽前の新芽に発病し、腐り、新芽が出て来ず枯れる。
2 開花前までの成長期に、篠の葉先から黄変し、そのうち篠全部が枯死する。抜き取ると、基部の生長点の部分が褐色に枯れている。
V 品種によるリゾクトニア耐性の強弱
品種によりリゾクトニア性立ち枯れ病の出やすい品種と出にくい品種があります。
リゾクトニアに比較的強いと思われる品種
(順不動) 業平,翠映,駒繋,キショウブとの交配種(ただし稔の秋は弱いように思う),
靄間空,桜ヶ丘,紫衣の誉,輝,雲井の雁,華紫,千代田城,猿踊,御成門,
ピンクフロスト,赤蜻蛉,旭丸,野辺の桜,瀞の光,光源氏,桃霞,葵の上,姫街道
新朝日の雪,追風,鳳凰冠,朝の光,雲井竜,紅姫,新水色獅子,八女姿,弥生鏡,
蛇ノ目傘,小町娘,沖津白波,大紫,江戸佐野の渡,山紅葉,淡雪桜,雨夜の星,夜の調
スティップルド・リップルス,連山,春の風,青岳城,潮流,長井小紫,姫鏡,三千年,爪紅
村祭,蘇峰,桜舟,泉川,青岳城,夜光の珠,桜川,紅孔雀(松阪)
(まあまあ耐性のある品種を挙げましたが、これらの品種でも発病します。これ以外にも比較的強い品種は、知らないだけであると思います。)
弱いまたは非常に弱い品種
星空,千代の春,新宇宙,五湖の遊,清少納言,昴,銀の詩,中禅寺湖,小桜姫,
出羽万里,太閤,源氏蛍,青海,銀の琴,滝紅葉,武者扇,浜名の風,山野辺,
宮の白菊,蛍の精,矢作川,イマキュリート・グリッター,磯辺,霧霞,伊豆の海,宇宙,八ヶ岳
神路の誉,雲衣裳,蝦夷桜,江戸自慢,剣の舞,大鳴海,大鳥毛,五三の宝系品種全部
山野辺,群青,桃祭(これ以外の品種も基本的に弱いと考えて下さい。)
W 防除方法
いずれも発症を前提として、予防するのが基本です。
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化学薬剤を使用した防除
一時的には効果があるように思いますが、すぐ病菌が耐性を持つようで気休め的な感じを受けました。また、有効細菌まで死滅させてしまう恐れがあり、薬を与えなくなれば天敵菌もいなくなった土壌で耐性のある病原菌が蔓延する恐れもあり、使用して良いものか悩むところです。
リゾレックス水和剤
商品名: リゾレックス水和剤
一般名等: トルクロホスメチル水和剤 (殺菌剤)
担当部署: 住友化学工業 農業化学部門
アグロ事業部 製品営業部
本社所在地: 東京都中央区新川2-27-1
お問合せ: TEL:
03-5543-5718
FAX: 03-5543-5910
実際に使用した感じ(あくまでも参考に)
効果は一時的で、耐性ができるのかすぐ効かなくなる。
リンバー粒剤
商品名: リンバー粒剤
一般名等: フラメトピル粒剤 (殺菌剤)
担当部署: 住友化学工業 農業化学部門
アグロ事業部 製品営業部
本社所在地: 東京都中央区新川2-27-1
お問合せ: TEL:
03-5543-5718
FAX: 03-5543-5910
実際に使用した感じ(あくまでも参考に)
効果は一時的で、耐性ができるのかすぐ効かなくなる。
この2品の薬剤については下記ページを参照下さい。
住友化学工業ホームページ
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/index.html
製品検索で「リゾレックス」とかを検索して下さい。
その他のリゾクトニアに効く薬剤。
(これらについては未使用です。)
バシタック水和剤
http://www.kumiai-chem.co.jp/sehin/sakin/bashitac_s75.html
バリダシン液剤
http://www.greenjapan.co.jp/validacin_e5.htm
2 天敵菌を利用した防除
リゾクトニアを食う天敵細菌を施すことで、防除する方法です。トリコデルマ細菌が有名ですが、実際に使用したところ、効果はあまり無い感じを受けました。リゾクトニアが多発している環境では効果がないのかもしれません。発病してからの使用でなく、あくまでも予防ですし、やればすぐ効くのではなく、年に数回施すうち、徐々に効いてくるといった効き方のようです。以下にトリコデルマ関連のページを紹介します。
トリコデルマ関連
http://www2a.biglobe.ne.jp/~fromsea/tricho.html
基本的に土壌に殺菌剤を散布することは、病害菌も死滅させることはできるが、有効微生物にも害を及ぼし、土壌微生物層の貧相化が起こり、それによって連作障害などまた別の障害が出てくる。こうした考えから、殺菌剤で対処するのではなく、天敵菌を施すことにより、土壌を健全な状態に保ったまま病害菌を死滅させる方法が、このトリコデルマ菌による防除方法です。目には目を菌には菌をという考え方です。
ただ、植物によってはトリコデルマ菌により立ち枯れ病などの病害が発生することもあるそうです。花菖蒲についてはわかりません。
そのほか、トビムシを利用した防除法が紹介されたページがありました。この方法は、実施したことはありません。
ビムシを利用した防除
http://ss.tnaes.affrc.go.jp/toshokan/tayori/95/9504.html
加茂花菖蒲園では、地元の豊田肥料(株)より、微生物資材としてシンビオンという製品を圃場に撒いています。リゾクトニアは少なくはなりましたが相変わらず発生しています。ただ、土が良くなってきたのか生育がとても良くなりました。下記が豊田肥料の製品のページです。ここのVSトリコをまた試そうか検討中です。http://www.toyodahiryo.co.jp/products/hiryo-1.htm
なお、ここの「トモエ富士緑」という化成肥料を鉢物に与えています。肥料成分は19.3.3で、チッソがずば抜けて多い緑茶専用肥料です。
そのほか、リゾクトニアに有効な対処法をご存知の方は、ご連絡いただければ幸いです。
その他 会報の関連ページ 「花菖蒲の新たな病害 リゾクトニア性立ち枯れ病」 会報28号
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